2022.3.31 千本桜歌麿
DIDの新旧比較 〜迷走するDID〜
 2020年国勢調査による人口集中地区図が公表されました。秋田県大曲と鹿児島県川内のDIDに違和感を感じます。大曲も川内も1つの市街地に見えるのに、2つのDIDに分離しています。大曲は川幅100m足らずの丸子川を境に、川内は川幅200mちょっとの川内川を境に分離しているのです。この程度の川幅でDIDが分離されるなら、太田川デルタに展開する広島市街は、5つの中洲がそれぞれ別々のDIDに分離される可能性だってあります。あくまでも可能性ですが‥‥。
 DIDで不可解なのは河川敷の扱いです。広島県三次の街並みは馬洗川を挟んで両岸に広がっています。かつては両岸の街並みを併せて1つのDIDでしたが、今回は北岸の街並みが除外され、南岸の街並みだけがDIDとなっています。これは、河川敷に不可解な境界が引かれて2つに分離したためかもしれない。そして、北岸は人口5,000人以上の要件を満たせず、DID形成は不可となった。南岸だけ生き延びた三次のDIDは、人口が前回より2,672人減少して8,793人になり、市街地が大きく縮小したかのような印象を与える結果となった。もちろん、以上のことは推測ですから、間違っていたらごめんなさい。ただ、言いたいのは、DID人口の増減は、人口動態だけでなく、基本調査区の設定と適用が大きく関わっているのではないか、ということです。
 花巻のDID分離は異常で、無理やり2つに引き裂かれた形をしています。吹張町、上町、鍛治町界隈は花巻の中心街です。中心街の一画を引き裂いてDIDから除外することに、地理的感性は感じられません。それなのに、東京都心の大手町、丸の内、内幸町、霞が関は、常住人口からすればスカスカの過疎地ですが、DIDに組み込まれています。都市施設の集積などを理由に、DIDに組み込んでいるのでしょう。それと同じ細やかな眼差しを花巻にも注いで欲しいものです。
 大阪の梅田も常住人口がほとんどいないのに、しっかりDIDに組み込まれています。平成27年調査によると、梅田1〜3丁目の面積は0.42km2、人口は34人、人口密度は1km2当たり81人。人口密度はガラガラです。少しは人が住んでいそうな、曽根崎、堂島あたりをひっくるめても、DIDの要件である人口密度4,000人以上には達しない。堂島スズメの都はるみを入れて水増ししても無理である。
 いろいろ書きましたが、DIDについては人口集中地区図を見るのが一番わかりやすいでしょう。そこで、河川敷を境に 2つに分離された大曲と川内。河川敷の影響を受けて縮小したと思われる三次。何が原因かわからないが無理やり2つに分離された花巻。川幅600mの安倍川で隔てられても同じDIDに包括される静岡。以上について、1970年と2020年の人口集中地区図を掲載します。DIDの新旧比較をお楽しみください。


大曲
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川内
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三次
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花巻
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静岡
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