地理と地域旅行記
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制作:千本桜 歌麿
旅行:2024年9月
文:2024年12月
公開:2025年1月
E-mail:tiritotiiki@gmail.com

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 2024年9月、まだ夏の陽が射す山形へ日帰り旅行。東根市の関山大滝でさわやかな空気を吸い、天童市の若松寺(じゃくしょうじ)へ。若松寺は歴史の古いお寺で、通称を若松観音(わかまつかんのん)という。

 若松観音の次は「ゆぴあ」で入浴と昼食。その後「道の駅天童温泉」で道草して、旧山形県庁舎の文翔館(ぶんしょうかん)へ。文翔館ではガイドに案内されて館内見学。最後に山形の街をぶらつき、七日町御殿堰(ごてんぜき)へ向かった。




関山大滝
 関山トンネルを突き抜けて山形県に進入。大滝ドライブインに車をとめた。「この陰に関山大滝があるんだ、行ってみよう」。あまり乗り気でないYT君を促し、急な石段を川に向かって下りてゆく。距離は短いが、かなり急坂だ。

 関山大滝は最上川支流の乱川(みだれがわ)が流れ落ちる滝。落差は10m。滝の付近は川遊びにもってこい。時刻は午前9時。朝の光に水面が輝いていた。
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若松観音 古参道
 若松観音は関山大滝から車で25分の山の中。境内まで車で行けるが、途中で古参道に立ち寄り100mほど歩いてみた。鳥居の奥に続く古参道は苔むして神秘的。徒歩20分で若松観音へ着くが時間が惜しい。やはり上まで車で登ろう。
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若松観音 境内案内図
 山形県民謡の花笠音頭は「めでためでたの若松さまよ」で唄い始まる。「若松さま」とは、縁結びで知られる若松観音のことで、山寺ほど有名ではないが、けっこう大きなお寺だ。

 境内をじっくり回ると2時間かかるが、時間がないので急ぎ足。1時間10分で、子育て地蔵堂→観音堂→本坊→縁福大風鈴→鐘楼→見晴台→奥の院→元三大師堂を見て回った。
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若松観音 山門
 若松寺の山門は、門柱があるだけで屋根がない。ずいぶん簡素だな。この門柱は本当に山門なのか? 詳しいことは判らないが境内へ入ってみよう。
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若松観音 子育て地蔵堂
 山門の脇に「めでた茶屋」という茶店があるが開いていない。山形名物の玉こんにゃくを食べたかったが残念。茶店の隣は子育て地蔵堂で、子供を抱いたお地蔵さまを祀っている。そこから石段を登って観音堂へ向かった。
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若松観音 観音堂
 石段を登ると正面に常香炉。その奥に大きな観音堂がドン!と建っている。観音堂は若松寺の中核となるお堂で、ご本尊の聖観世音菩薩が祀られている。いわゆる若松観音だ。

 観音堂は室町時代の建築で国の重要文化財。そして最上三十三観音の第一番札所である。観音堂の周りには、まばらだが参拝客の姿も見える。昔はもっと賑わっていたのかな?
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若松観音 地蔵と風車
 観音堂の近くには絵馬掛け・お地蔵さん・風車(かざぐるま)。お地蔵さんの頭巾が赤いのは、赤が魔除けの色だから? 水子の供養にグルグルまわる風車を供えるのは、輪廻転生を信じてか?
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若松観音 本坊
 本堂と本坊は似て非なる。本堂はご本尊を安置するお堂で、本坊は住職が寝食や仕事をする建物である。本堂(観音堂)から本坊へ行ってみた。本坊は「祈願所」の扁額を掲げ、ご朱印・お札・お守の授与所となっている。
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若松観音 縁福大風鈴
 本坊の次は縁福大風鈴へ。読み方は「えんぷくおおふうりん」か「えんぷくだいふうりん」か判断しかねるが、大きな風鈴が吊るしてある。良縁や幸福の願いを込めてゆっくり3回鳴らし、心静かに合掌してくださいとのこと。
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若松観音 下界展望
 縁福大風鈴からの眺めは美しく、山寺の五大堂から見下ろした風景を思い出す。なんだか山寺にいるような気がしてきた。街道沿いに点在する家屋は若松集落。ここへ来るとき通ってきた道だ。

 山の後ろは天童市街。遠くに霞んで見えるのは寒河江と河北。スカイラインを描くのは朝日連峰・月山・葉山の峰々。冬になったら、あの月山が真っ白になるんだ。月山を眺めていると瞼に浮かぶものがあり、目頭が熱くなる。
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若松観音 鐘楼
 縁福大風鈴の近くに鐘楼が建っている。せっかくだから鐘を突いてみよう。釣鐘の内側を覗き込みたくなるのは性格のせい。帽子のツバで視界が遮られ、思いきり釣鐘に頭をぶつけてしまった。
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若松観音 分霊堂
 鐘楼の先に見晴台へ続く道がある。ハイキング気分で登ってみた。道端には最上三十三観音の分霊堂(小さな石の祠)が配置してある。この分霊堂をお参りすると、三十三観音すべてを巡ったことになるという。

 分霊堂に添えられた石碑には、第1番「若松」から番外の「世照」まで、34の札所と御詠歌が刻まれている。この札所の名称を読むだけでも楽しい。でも、第15番の「落裳」は難しくて読めない。「おとも」と読むそうだ。
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若松観音 奥の院
 三十三観音分霊堂を巡りながら見晴台に到着したが、「なんだこりゃ」という感じ。見晴台なのに樹木が繁って下界が見えない。この先は坂道を奥の院へ下りていく。奥の院は弁天様を祀った小さなお堂。赤い橋は塗装が剥げて廃れた感じだ。
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若松観音 元三大師堂
 奥の院から坂道を下って元三大師堂(がんざんだいしどう)へ。元三大師堂は風変わりな建物で、昭和63年に建てられたコンクリート造りの絵馬堂の上に、古い木造のお堂がのっている状態。

 元三大師堂は駐車場からも見えるが、やっぱり変な建築だ。元三大師堂の方が古くからあったとすると、その下にどんな工法で絵馬堂を増築したのか。考えても解らないから「ゆぴあ」に行って風呂に入ろう。
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天童最上川温泉ゆぴあ
 天童最上川温泉「ゆぴあ」は、水田やサクランボ畑の中に建つ大規模日帰り温泉施設だ。お隣の寒河江市にも大型日帰り温泉「ゆ〜チェリー」がある。「ゆぴあ」と「ゆ〜チェリー」は互角のライバル。

 「ゆぴあ」は天童市の公共施設で入浴料は350円。広々した売店コーナーを通って番台へ。自慢は県内最大級の露天風呂。入浴後に館内の食事処で昼食を済ませ、「道の駅天童温泉」に寄り道しながら山形市内へ向かった。
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文翔館 外観
 山形市の中心街で威容を誇る旧山形県庁舍。この建物は大正5年に建てられ、昭和50年まで県庁舎として使用されていた。昭和59年には国の重要文化財となり、その後10年かけて復原工事が行われた。

 復元された旧山形県庁舍は現在、山形県郷土館(愛称:文翔館)として無料公開されている。シンメトリックで重厚な洋風建築。これは山形の宝だ。文翔館を見学できて良かった。
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文翔館 塔時計
 塔時計は文翔館のシンボル。日本で今も稼動している塔時計としては、札幌の時計台に次いで2番目に古く、大正5年から現在まで100年以上も動き続けている。振り子を動かす分銅は5日に一度、手動で巻き上げているという。
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文翔館 中央階段
 入館してすぐガイド嬢と目があった。本当は中年のお姉さんだが、感じの良い人なのでガイド“嬢”としておこう。「案内してもらえますか」と話しかけると、ガイド嬢は快く承諾。施設見学はガイド付きがベストだ。

 中央階段の手すりは重厚で、踊り場には月桂樹の輪飾りをデザインしたステンドグラス。通路の柱には漆喰塗りのレリーフ。文翔館では随所に職人技が光る装飾を見ることができる。
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文翔館 正庁
 文翔館に入館するのは、文翔館特別企画展「五百澤智也の世界」以来16年ぶり。ここで五百澤氏にお会いした日が懐かしい! そんな感傷に浸る間もなく、ガイド嬢に促されて正庁へと入っていく。

 正庁は式典や公式行事が行われた部屋で、現代の大広間・講堂にあたる。正庁の内装は豪華で、天井には漆喰塗りの花飾り。花びらを1つ1つ作りあげた左官職人の息遣いが伝わってくるようだ。
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文翔館 正庁バルコニー
 正庁からはバルコニーに出られる。「バルコニーへどうぞ」とガイド嬢。待ってました! 一度でいいからバルコニーに立って山形の街を眺めたかったのだ。おお、素晴らしい眺めだ。目抜き通りの七日町大通りが一直線に伸びている!
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文翔館 貴賓室
 ガイド嬢は正庁から貴賓室へ進んでいく。貴賓室は皇族や国の高官等が来県した際に使用した部屋で、正庁の次に豪華な部屋だ。花台など大正時代から使われていたものを修理して展示しているとのこと。
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文翔館 知事室
 知事室は当時の様子がわかるように机・椅子・壁紙が復原されてる。床に敷かれた高価な手織緞通(ておりだんつう)は、昭和35年に山形県山辺町で織られ、実際にこの部屋で使用されていたものである。
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文翔館 中庭
 中庭は赤レンガの建物に囲まれた石畳。ヨーロッパを旅しているようだ。それなのに入館無料、ガイドも無料。さらに駐車場も無料なのだ。県都の中心街にあって、この大盤振る舞い。ありがとう文翔館そしてガイド嬢!
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文翔館 修復工事の動画
リンクをクリック・タップすると、山形県生涯学習文化財団が制作した文翔館修復工事の動画が映し出されます。文翔館を見学する前に一度は見ておく価値がある動画です。



七日町御殿堰
 文翔館から山形の中心商店街「七日町」へ。正式には「なぬかまち」だが、今では「なのかまち」が当り前。大沼百貨店の閉店で、また寂しくなった七日町。でも、県都だけあって立派な都市景観をしている。

 その七日町に七日町御殿堰(ごてんぜき)という商業施設がある。周りはビル街だが、柳が日本情緒を漂わせ、そこだけ和モダンな空間。岩淵茶舗のソフトクリームはコッテリして美味しかった。
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