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スイスの地図は地形表現が見事で美しい。イムホフおじさんのアトリエは遠いスイスの田舎町。窓の隙間から、おじさんのアトリエを覗き込む。「おや、また来たのかい」。長く伸びた白髪混じりの眉毛の下で、おじさんの目が笑っている。おじさん、何を描いてるの。等高線を読み取りながら地形に「ぼかし」をかけているのさ。影をつけると平面図なのに立体的に見えるだろう。君も描いてみるかい。左斜め上から光が当たると仮定して陰影を描くんだ。鉛筆はステッドラーのマルスがいいよ。この斜面は暗く、ここは明るく、鉛筆を滑らかに運ぶんだ。もっとデフォルメ。もっと暗く、もっと明るく。ほら、地形が盛り上がって来ただろう。わぁ〜、空を飛んでいるようだ。上手く描けたと喜んだ瞬間、おじさんの姿がカールの谷に吸い込まれて消えてゆく。あぁ、夢だったのか。イムホフおじさんはアルプスの麓の田舎町。ゼラニウムが咲いている田舎町。
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