地理と地域
都市地域の設定と都市規模 昭和40年代
〜都市の大きさ〜
制作:千本桜 歌麿
設置日:2003.4.10
最終更新日:2022.4.26
E-mail:tiritotiiki@gmail.com
地図
昭和40年代の都市分布と都市規模

はじめに
 皆さんは、何をもって「都市の大きさ」を判断しますか。私たちが目にする地理統計の多くは、市区町村を地域単位としています。都市の大きさを量る場合も、市区町村の人口などから判断するのが一般的です。しかし、これでは市区町村の大きさを知ることができても、都市の大きさを知ることはできません。市区町村の規模ではなく都市の規模を知りたい。それを発露に、人口集中地区(略称DID)を都市地域とし、都市地域に立地する金融保険業および卸売業小売業の従業者数を基にして、都市の大きさの算出を試みたのは昭和49年のことでした。今となっては古い統計になってしまいましたが、当時の都市の大きさを記録しておくために当ページを作ることにしました。
 なお、DIDとは「Densely Inhabited District」の略で、「人が密集して居住している地区」つまり都市的地域を意味します。以後、当ページは人口集中地区をDIDと記します。

1・日本の都市 ビッグ20 昭和40年代 (実力人口順)
都市名
都市地域の範囲
実力人口
昭和47年
自立度
(%)
DID人口
昭和45年
市域人口
昭和45年
東京
東京23区、横浜市などにまたがる連担DID
22,789,616
144
15,787,678
東京23区 8,840,942
大阪
大阪市、神戸市などにまたがる連担DID
12,724,912
143
8,904,319
大阪市 2,980,487
名古屋
名古屋市、春日井市などにまたがる連担DID
3,621,744
191
1,893,961
名古屋市 2,036,053
京都
京都市の連担DID
1,790,336
150
1,194,984
京都市 1,419,165
福岡
福岡市、春日町などにまたがる連担DID
1,683,528
218
771,654
福岡市  871,717
札幌
札幌市の連担DID
1,462,680
182
802,751
札幌市 1,010,177
広島
広島市、海田町などにまたがる連担DID
1,213,048
194
623,983
広島市  746,287
北九州
北九州市の連担DID
1,114,704
130
857,409
北九州市 1,042,318
仙台
仙台市I DIDと泉町DIDの連担DID
845,200
189
448,135
仙台市  545,065
熊本
熊本市DID
588,184
170
346,885
熊本市  449,254
岐阜
岐阜市DID
546,680
207
263,910
岐阜市 385,727
鹿児島
鹿児島市DID
523,544
171
306,508
鹿児島市 403,340
新潟
新潟市I DID
517,928
214
242,579
新潟市 383,919
静岡
静岡市I DID
490,208
177
276,899
静岡市 416,378
長崎
長崎市DID
478,528
152
314,458
長崎市 426,747
岡山
岡山市I DID
455,832
246
185,207
岡山市 460,542
金沢
金沢市I DID
455,032
195
232,928
金沢市 361,379
千葉
千葉市I DID
421,976
135
312,913
千葉市 482,293
高松
高松市I DID
403,240
281
143,683
高松市 274,367
姫路
姫路市I DID
397,488
207
191,988
姫路市 408,353
実力人口とは、金融保険業・卸売業小売業の従業者数から算出した都市の規模を人口に換算したもので、都市の大きさを表しています。なお、「実力人口」は筆者独自の造語です。

2・都市地域(DID)に任意の都市名を付す
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(1)市町村名ではなく、市街地名を都市名とする
 当ページは、DIDに任意の都市名を付しています。都市名は、市街地名を適用しているため、市町村名とは合致しない場合もあります。例として、宮城県名取市DID図を掲げます。総理府統計局はこの市街地を名取市DIDとしています。しかし、ここは名取市街ではなく、閖上市街と呼ばれるのが一般的です。従って、当ページは名取市DIDの都市名を「閖上」とします。同じ例は、秋田県男鹿市の「船川」、石川県加賀市の「大聖寺」、徳島県阿南市の「富岡」、大分県宇佐市の「長洲」など、各地に分布しています。
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(2)連担DIDに付す都市名・その1「名称を1つに絞る」
 連担DIDに付す都市名には、区域内で最も中心性の高い市街地の名称を適用します。例として、奈良県王寺町と三郷町にまたがる連担DIDをあげます。DID人口は両者ほぼ互角。しかし、DID区域内に立地する金融保険業および卸売業小売業の従業者数は、王寺町1,175人、三郷町88人で、両者には明確な差があり、王寺の市街地は中心性で優位に立ちます。従って当ページは、この連担DIDの都市名を「王寺」とします。東京特別区や横浜市などにまたがる連担DIDの都市名を「東京」とするのも、この例です。
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(3)連担DIDに付す都市名・その2「名称を連称する」
 連担DIDに付す都市名には、区域内で最も中心性の高い市街地名を適用しますが、中には同規模の市街地が連担することもあります。このような場合は連称都市名とします。例として、広島県五日市町と廿日市町にまたがる連担DIDをあげます。DID区域内に立地する金融保険業および卸売業小売業の従業者数は、五日市町2,624人、廿日市町2,125人。両者は互いに譲れぬ関係です。従って当ページは、この連担DIDの都市名を「五日市・廿日市」と連称します。「藤沢・茅ヶ崎」「明石・垂水」なども、この例です。

3・都市地域(DID)の地域範囲を画定する
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(1)DIDを都市地域とする
 DIDとは都市的地域のことで、人口5千人以上の市街地を指す統計上の地域区分です。例として、宮城県大河原町のDID図を掲げます。赤色の範囲がDIDで、家屋が密集し、人口密度の高い市街地を形成しています。当ページは、この赤色の範囲をもって1つの都市地域とします。
 大河原町のDIDは1ヶ所ですが、中にはDIDのない市町村もあれば、複数のDIDを持つ市町もあります。また、別々の市町村のDIDが隣接しあい、つながりあって一体となった連担DID(連担都市地域)もあります。
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(2)市町村内に複数のDIDがある場合
 市町村内に複数のDIDがある場合は、それぞれを別々の都市地域とします。例えば、福島県いわき市は7ヶ所にDIDがあり、総理府統計局はそれぞれにI〜VIIのローマ数字を付しています。それを地名に置き換えると、平、小名浜、湯本、内郷、四倉、植田、江名・中之作の7つになります。これらは、それぞれが独立したDIDですから、別々の都市地域として扱います。
 このような例は全国的にあって、京都府舞鶴市は東舞鶴と西舞鶴の2ヶ所に、岡山県倉敷市は倉敷や児島など5ヶ所に、DIDを形成する市街地が分布しています。
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(3)隣接市町村のDIDが連担する場合
 別々の市町村のDIDが隣接する場合は、これを統合して1つのDIDとします。例えば、宮城県塩竈市と多賀城町のDIDは互いに隣接し、市町の境界をまたいで市街地が広がり、一体化した都市地域を形成しています。このように連担するDIDは、統合して1つの都市地域とします。
 連担DIDは全国的に分布し、北海道では函館市と亀田町の市街地が連担し、九州では福岡県大牟田市と熊本県荒尾市I の市街地が連担しています。中でも、東京、大阪、名古屋は、いくつもの市や町のDIDが連担し、大きな都市地域を形成しています。
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(4)東京連担DIDについて
 東京23区を中心とする東京連担DID(東京都市地域)は、横浜市、川崎市、立川市、船橋市など、いくつもの市や町にまたがって市街地が広がる世界最大の都市地域です。そこには、市区町村単位では捉えることのできない巨大都市の姿があり、都市圏全体を俯瞰した捉え方が重要になっています。
 東京の連担DID図を掲げます。ピンク色の範囲が連担DIDで、東は千葉県八千代市、西は東京都羽村町、南は神奈川県横須賀市、北は埼玉県大宮市に至るまで、途切れなく市街地が続いています。当ページは、このピンク色で着色した範囲をもって「東京」という名の都市とします。
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(5)大阪連担DIDについて
 大阪市を中心とする大阪連担DID(大阪都市地域)は、堺市、尼崎市など、いくつもの市や町にまたがって市街地が広がる世界有数の都市地域です。アメリカの地図出版社・ランドマクナリー社は、1975年の統計で大阪都市圏の人口を、東京、ニューヨークに次ぐ世界3位に位置付けています。
 大阪の連担DID図を掲げます。ピンク色の範囲が連担DIDで、東は大阪府枚方市、西は兵庫県神戸市、南は大阪府貝塚市、北は大阪府高槻市に至るまで、途切れなく市街地が続いています。当ページは、このピンク色で着色した範囲をもって「大阪」という名の都市とします。
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(6)名古屋連担DIDについて
 名古屋市を中心とする名古屋連担DID(名古屋都市地域)も、市区町村の境界を超えて広がり、春日井市、西批杷島町、清洲町、新川町、甚目寺町、大治村に至るまで市街地が伸びています。名古屋の連担DID図を掲げます。ピンク色の範囲が連担DIDで、当ページは、このピンク色で着色した範囲をもって「名古屋」という名の都市とします。
 このような連担DIDは郡部の町にも形成され、埼玉県杉戸町と宮代町にまたがる市街地や、静岡県三島市、長泉町、清水町にまたがる市街地など、各地に分布しています。以下に、連担DIDの一覧を掲げます。
(7)連担DID一覧
都市名 連担DID(連担都市地域)
札幌 札幌市中央区、北区、東区、白石区I、豊平区、南区、西区I の連担DID
函館 函館市、亀田町の連担DID
室蘭 室蘭市、登別市II の連担DID
仙台 仙台市I、泉町の連担DID
塩竈・多賀城 塩竈市、多賀城町の連担DID
川越・福岡 川越市I、福岡町、大井町の連担DID
狭山・入間 狭山市、入間市I、入間市II、所沢市II の連担DID
志木・新座 足立町、新座町I、朝霞市II、朝霞市III の連担DID
杉戸・百間 杉戸町、宮代町の連担DID
柏市、流山市II、松戸市III の連担DID
八幡・浜野 市原市I、千葉市V の連担DID
東京 東京特別区全区、川口市、浦和市、大宮市、所沢市I、与野市、草加市、越谷市II、蕨市、戸田市、鳩ヶ谷市、朝霞市I、新座町II・III・IV・V、大和町、三郷町I・II、千葉市II、市川市I・II、船橋市I、松戸市I、習志野市、八千代市I、浦安町、立川市、武蔵野市、三鷹市、府中市、昭島市、調布市、町田市I、小金井市、小平市、日野市I、東村山市I・II、国分寺市、国立市、田無市、保谷市、福生市、狛江市、東大和市I・II、清瀬市I、東久留米市I、羽村町、多摩町、稲城町II、横浜市鶴見区、神奈川区、西区、中区、南区、保土ヶ谷区、磯子区、金沢区、港北区I、戸塚区I、港南区、旭区、瀬谷区、横須賀市I、川崎市I、相模原市I、大和市、座間町の連担DID
鎌倉・逗子 鎌倉市I、逗子市、横浜市戸塚区II、葉山町の連担DID
藤沢・茅ヶ崎 藤沢市I、茅ヶ崎市I、鎌倉市II の連担DID
松本 松本市、本郷村の連担人DID
浜松 浜松市、可美村の連担DID
清水 清水市、静岡市III の連担DID
三島 三島市、長泉町、清水町の連担DID
富士 富士市II、富士川町の連担DID
蒲原・由比 蒲原町、由比町の連担DID
新居・舞阪 新居町、舞阪町の連担DID
名古屋 名古屋市中区、千種区I、東区、北区、西区、中村区、昭和区I・IV、瑞穂区、熱田区、中川区I・II、港区I・II・III、南区、守山区、緑区I、春日井市I・II、西批杷島町、清洲町、新川町、甚目寺町、大治村の連担DID
一宮 一宮市I、一宮市II、尾西市の連担DID
瀬戸 瀬戸市、旭町の連担DID
新川・高浜 碧南市II、高浜町の連担DID
横須賀・八幡 東海市I、知多市の連担DID
西春・師勝 西春町、師勝町の連担DID
京都 京都市中京区、北区、上京区、左京区、東山区I、下京区、南区I、右京区、伏見区I の連担DID
宇治・城陽 宇治市、城陽町、京都市伏見区II の連担DID
長岡・向日 長岡町、向日町、京都市南区II の連担DID
大阪 大阪市北区、都島区、福島区、此花区、東区、西区、港区、大正区、天王寺区、南区、浪速区、大淀区、西淀川区、東淀川区、東成区、生野区、旭区、城東区I・II、阿倍野区、住吉区、東住吉区、西成区、堺市I、岸和田市I、豊中市I・II、池田市、吹田市、泉大津市、高槻市I、貝塚市、守口市、枚方市、茨木市、八尾市、寝屋川市、松原市、大東市、和泉市、箕面市、柏原市I、羽曳野市I・II、門真市I・II、東大阪市、四条畷市、忠岡町、美原町、交野町、神戸市東灘区、灘区、葺合区、生田区、兵庫区I、長田区、須磨区、尼崎市、西宮市、芦屋市、伊丹市、宝塚市、川西市の連担DID
泉佐野 泉佐野市、田尻町の連担DID
明石・垂水 明石市、神戸市垂水区I の連担DID
加古川・高砂 加古川市I、高砂市、姫路市V の連担DID
王寺 王寺町、三郷町の連担DID
広島 広島市I、府中町、船越町、海田町、矢野町、安古市町の連担DID
五日市・廿日市 五日市町、廿日市町の連担DID
徳山・南陽 徳山市、南陽町の連担DID
岩国・大竹 岩国市、大竹市I、和木村の連担DID
福岡 福岡市中央区、東区I、博多区、南区、西区、春日町、大野町の連担DID
北九州 北九州市小倉区I、門司区、若松区、八幡区I、戸畑区の連担DID
大牟田 大牟田市、荒尾市I の連担DID
飯塚 飯塚市I、穂波町の連担DID
二日市 筑紫野町、太宰府町II の連担DID
コザ・美里 コザ市、美里村の連担DID
浦添・安謝 浦添市、那覇市II の連担DID


4・都市地域(DID)の実力人口を算出する
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(1)都市の実力人口とは
 都市の実力人口とは、都市の規模を人口に換算したもので、筆者独自の造語です。九州の2大都市、北九州と福岡の人口を比較してみましょう。昭和45年国勢調査の市域人口は、北九州市104万人、福岡市87万人。連担DID人口は、北九州86万人、福岡77万人です。以上のことから判断すると、北九州は福岡より規模の大きな都市になります。しかし、街並みから受ける印象は、福岡の方が大きな都市に見えます。そこで産業構成に着目し、実力人口を算出してみました。すると、福岡168万人、北九州111万人になり、福岡の方が大きい都市という結果になりました。以下に、実力人口の算出方法について述べます。
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(2)実力人口を算出する
 実力人口は都市産業の集積から割り出します。右表はDIDが占める産業別従業者数の占有率を表しています。占有率が高くなるほど都市産業の様相が濃くなるようです。特に金融保険業は従業者の92.7%がDID区域内に従事することから、都市地域でなければ成り立ちにくい産業と考えられます。そこで、当ページはDID占有率の高い金融保険業と卸売業小売業を都市の代表産業とみなし、DIDに従事する当該産業の従業者数をもって都市規模としました。例えば、東京連担DIDにおける金融保険業および卸売業小売業の従業者数は2,848,702人ですから、これが東京連担DIDの都市規模になります。
 次に、都市規模に係数8を乗算して実力人口を算出します。係数を8とするのは、国民の8人に1人が金融保険業または卸売業小売業に従事しており、当該産業の従業者1人は人口8人に値するからです。例として、東京連担DIDの実力人口を算出すると、2,848,702×8=2,789,616(約2,790万人)になります。東京連担DIDを範囲とする「東京という名の都市」は、2,790万人分の働きをしている都市とみることができます。

5・都市地域(DID)の自立度を算出する
 都市には、地域の中心都市として自立性を備えた都市もあれば、ベッドタウンとして母都市に従属する都市もあります。同じ規模の実力人口を持ちながら、自立性の有る無しで街の雰囲気が異なってくるはずです。そこで、実力人口をDID人口で徐し、都市の自立度を算出してみました。東京連担DIDは、実力人口2,789,616÷DID人口15,787,678=自立度144%になります。これは、あくまでも目安であり、自立度の数値が中心性や拠点性に直結するわけではありません。しかし、自立度が100%未満の都市は、常住人口に対して都市機能の集積が足りなく、中心性が弱い傾向にあります。

7・都市の大きさ 国内ランキング 昭和40年代
現在、670位までを掲載しています。
1〜100位101〜200位201〜300位301〜400位401〜500位501〜600位601〜700位701〜800位801〜900位901〜1000位

地理と地域>都市地域の設定と都市規模 昭和40年代