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都市規模計量とデータ加工
制作:千本桜 歌麿  設置日:2003.4.10  最終更新日:2018.3.6
E-mail:tiritotiiki@gmail.com
 都市の規模を計量するに当たっては、総理府統計局発行の「昭和47年事業所統計調査報告 別巻人口集中地区国勢統計区編」と「昭和45年国勢調査報告 別巻わが国の人口集中地区」を基礎資料にして、次のようなデータ加工を行っています。
 1・人口集中地区を都市地域とする
 2・複数市区町村の人口集中地区が連接する場合は統合して一つの都市地域とする
 3・金融保険業と卸売小売業の従業者数の合算数値を都市の規模とする
 4・都市規模に係数8を乗じて人口に換算する
 5・換算人口を人口集中地区人口で除して都市機能の充足率を算出する
 6・個々の都市地域に名称を付す

1・人口集中地区(DID)を都市地域とする
 人口集中地区とは、各市区町村の区域内にあって特に人口密度の高い地域を統計上の地域単位として画定したものです。広い意味の市街地または都市地域に相当し、DIDとも呼ばれています。詳細は総務省統計局のホームページ人口集中地区とはをご覧下さい。以後、当ページは人口集中地区をDIDと記します。

2・複数市区町村のDIDが連接する場合は統合して一つの都市地域とする
 総理府統計局はDIDを市区町村ごとに設定しています。しかし、私の関心事は自治体の規模ではなく都市の規模ですから、市区町村の境界に関わらず市街地の連続が途切れるまでを一個の都市地域として括ります。右図は東京、大阪の連担DIDを表わしています。東京を核とする市街地は、市区町村の境界を越えて横須賀、羽村、大宮、八千代まで連続しています。このように連担したDIDは統合して一個の都市地域とします。大阪も同様に神戸、高槻、貝塚に連なるDIDを統合して一個の都市地域とします。統合の対象となる連担DIDは小都市にもあります。例えば、埼玉県杉戸町宮代町のDID、静岡県蒲原町由比町のDIDなどです。統合するDIDの一覧を下に掲げます。

統合対象となるDID一覧
都市地域名 統合対象となるDID
札幌 札幌市中央区、北区、東区、白石区I、豊平区、南区、西区I のDID
函館・亀田 函館市、亀田市のDID
室蘭 室蘭市、登別市II のDID
仙台 仙台市I、泉市のDID
塩竈・多賀城 塩竈市、多賀城市のDID
川越・上福岡 川越市I、上福岡市、大井町のDID
狭山・入間 狭山市、入間市I、入間市II、所沢市II のDID
志木・新座・三原・朝志ヶ丘 志木市、新座市I、朝霞市II、朝霞市III のDID
杉戸・宮代 杉戸町、宮代町のDID
柏・小金 柏市、流山市II、松戸市III のDID
八幡・浜野 市原市I、千葉市V のDID
東京・横浜 東京特別区全区、川口市、浦和市、大宮市、所沢市I、与野市、草加市、越谷市II、蕨市、戸田市、鳩ヶ谷市、朝霞市I、新座町II・III・IV・V、大和町、三郷町I・II、千葉市II、市川市I・II、船橋市I、松戸市I、習志野市、八千代市I、浦安町、立川市、武蔵野市、三鷹市、府中市、昭島市、調布市、町田市I、小金井市、小平市、日野市I、東村山市I・II、国分寺市、国立市、田無市、保谷市、福生市、狛江市、東大和市I・II、清瀬市I、東久留米市I、羽村町、多摩町、稲城町II、横浜市鶴見区、神奈川区、西区、中区、南区、保土ヶ谷区、磯子区、金沢区、港北区I、戸塚区I、港南区、旭区、瀬谷区、横須賀市I、川崎市I、相模原市I、大和市、座間町のDID
鎌倉・逗子・本郷 鎌倉市I、逗子市、横浜市戸塚区II、葉山町のDID
藤沢・茅ヶ崎 藤沢市I、茅ヶ崎市I、鎌倉市II のDID
松本 松本市、本郷村のDID
浜松 浜松市、可美村のDID
清水 清水市、静岡市III のDID
三島・長泉・清水 三島市、長泉町、清水町のDID
富士・富士川 富士市II、富士川町のDID
蒲原・由比 蒲原町、由比町のDID
新居・舞阪 新居町、舞阪町のDID
名古屋 名古屋市中区、千種区I、東区、北区、西区、中村区、昭和区I・IV、瑞穂区、熱田区、中川区I・II、港区I・II・III、南区、守山区、緑区I、春日井市I・II、西批杷島町、清洲町、新川町、甚目寺町、大治村のDID
一宮・尾西 一宮市I、一宮市II、尾西市のDID
瀬戸・尾張旭 瀬戸市、尾張旭市のDID
新川・高浜 碧南市II、高浜市のDID
東海・知多 東海市I、知多市のDID
師勝・西春 師勝町、西春町のDID
京都 京都市中京区、北区、上京区、左京区、東山区I、下京区、南区I、右京区、伏見区I のDID
宇治・城陽・醍醐 宇治市、城陽市、京都市伏見区II のDID
長岡・向日・久世 長岡町、向日町、京都市南区II のDID
大阪・神戸 大阪市北区、都島区、福島区、此花区、東区、西区、港区、大正区、天王寺区、南区、浪速区、大淀区、西淀川区、東淀川区、東成区、生野区、旭区、城東区I・II、阿倍野区、住吉区、東住吉区、西成区、堺市I、岸和田市I、豊中市I・II、池田市、吹田市、泉大津市、高槻市I、貝塚市、守口市、枚方市、茨木市、八尾市、寝屋川市、松原市、大東市、和泉市、箕面市、柏原市I、羽曳野市I・II、門真市I・II、東大阪市、四条畷市、忠岡町、美原町、交野町、神戸市東灘区、灘区、葺合区、生田区、兵庫区I、長田区、須磨区、尼崎市、西宮市、芦屋市、伊丹市、宝塚市、川西市のDID
泉佐野・田尻 泉佐野市、田尻町のDID
明石・垂水 明石市、神戸市垂水区I のDID
加古川・高砂 加古川市I、高砂市、姫路市V のDID
王寺・三郷 王寺町、三郷町のDID
広島 広島市I、府中町、船越町、海田町、矢野町、安古市町のDID
五日市・廿日市 五日市町、廿日市町のDID
徳山・新南陽 徳山市、新南陽市のDID
岩国・大竹 岩国市、大竹市I、和木村のDID
福岡 福岡市中央区、東区I、博多区、南区、西区、春日市、大野市のDID
北九州 北九州市小倉区I、門司区、若松区、八幡区I、戸畑区のDID
大牟田・荒尾 大牟田市、荒尾市I のDID
飯塚 飯塚市I、穂波町のDID
筑紫野・水城 筑紫野市、太宰府町II のDID
コザ・美里 コザ市、美里村のDID
浦添・安謝 浦添市、那覇市II のDID
 市区町村名は昭和47年9月1日時点のものです。

3・金融保険業と卸売小売業の従業者数の合算数値を都市の規模とする
 一般的には第二次、第三次産業が都市産業と言われています。しかし、工場があっても商店のない町並みを都市的と感じる人は少ないようです。いったい、どのような産業が立地すると町並みは都市的に見えるのでしょう。そこで産業別に、DIDで従事する従業者数の国内に占める割合を算出し、都市地域でなければ成り立ちにくい産業と、都市地域以外でも成り立ちやすい産業を分析してみました。

国内全体に占めるDIDで従事する人の割合
順位 産業 国内全体の従業者数(人) DIDで従事する従業者数(人) DIDで従事する割合(%)
1 金融・保険業 1,416,720 1,313,223 93
2 不動産業 403,931 360,955 89
3 卸売・小売業 11,721,028 9,175,700 78
4 運輸・通信業 3,127,627 2,388,738 76
5 電気・ガス・水道・熱供給業 277,441 210,038 76
6 公務 1,548,279 1,126,457 73
7 サービス業 7,596,547 4,920,965 65
8 建設業 4,047,432 2,460,101 61
9 製造業 13,335,780 7,951,679 60
10 鉱業 187,089 63,294 34
 分析の結果は上表のとおりです。DIDで従事する人の割合が高いのは金融保険業、不動産業、卸売小売業などで、これらは都市地域でなければ成り立ちにくい産業になります。それに対して鉱業、製造業、建設業は割合が低く、これらは都市地域以外でも成り立ちやすいと考えられます。よって、金融保険業、不動産業、卸売小売業の従業者数から都市地域の規模や力を量ることが可能と考えました。ただし、この計量を試みた当時、私はまだ電卓なるものを持っておらず、そろばんで計算していましたから相当な時間を要しました。それで、実数の少ない不動産業を外しても大勢に影響なしと判断し、金融保険業、卸売小売業の従業者数の和のみを算出しています。

4・都市規模に係数8を乗じて人口に換算する
 金融保険業と卸売小売業の従業者数の和を都市の規模としました。すると、東京の規模は約285万、大阪は約159万、福岡は約21万、高松は約5万、弘前は約2万、萩は約5千になります。でも、このような数値から都市の規模を想像するのは難しいものです。そこで、都市の大きさがイメージできるように数値を人口に換算します。換算人口は次のようにして算出します。まず、昭和45年国勢調査全国人口104,665,171人を昭和47年事業所統計による金融保険業、卸売小売業の全国従業者数13,137,748人で除します。すると、約8という数字が弾き出されました。つまり、国民の8人に1人は金融保険業、卸売小売業の事業所で従事する従業者ということになります。この係数8を都市規模に乗じて得た数値が換算人口です。その結果、東京は約2,280万人、大阪は約1,270万人、福岡は約168万人、高松は約40万人、弘前は約16万人、萩は約4万人になりました。このようにして算出された換算人口は、昭和40年代の市街地の広がりや街の賑わいから伝わってくる都市の大きさに合致していると私は感じています。

5・換算人口をDID人口で除して都市機能の充足率を算出する
 都市には自立して地域の中心機能を果たすものと、他都市に依存して自立できないものとがあります。このような性向を明らかにするために、都市機能の充足率を算出してみました。算出方法は「換算人口÷DID人口×100」です。例として、諏訪湖に面した三つの都市地域、上諏訪、岡谷、下諏訪の充足率を算出すると下記のようになります。
上諏訪:換算人口45,016人÷DID人口27,789人×100=充足率162%
岡 谷:換算人口48,712人÷DID人口45,816人×100=充足率106%
下諏訪:換算人口16,976人÷DID人口23,378人×100=充足率73%
充足率162%の上諏訪は諏訪地方で最も中心性が強く、周辺部に影響力を持つ都市地域と考えられます。岡谷は換算人口もDID人口も上諏訪を上回りますが、充足率が下回っています。面的広がりの大きさに比して、盛り上がりに欠ける印象を与える都市地域ではないでしょうか。充足率が73%と低率な下諏訪は、上諏訪、岡谷の都市機能に依存していることが考えられます。本来、都市は周辺地域に都市機能を提供する立場にあるわけですが、他都市に依存している下諏訪は、その役目を果たしていないことになります。

6・個々の都市地域に名称を付す
 個々の都市地域の名称は、通念的な集落名、市街地名、都市名の中から適宜に選択します。ただし、拮抗した規模のDIDが連担して一つの都市地域を形成する場合は、「藤沢茅ヶ崎」、「加古川高砂」のように連称表記します。連称採択の基準は首位DIDの都市規模を100として、下位DIDの都市規模が20以上の場合です。例として、兵庫県の加古川市IDID、高砂市DID、姫路市VDID が一つになった都市地域の場合、加古川市1DIDを100とすると、高砂市DID85、姫路市VDID16ですから、都市地域名は「加古川高砂」になります。また、福岡県大牟田市DIDと熊本県荒尾市DID一つになった都市地域は、大牟田市DIDが100に対して荒尾市DIDは9ですから、都市地域名は連称しないで「大牟田」と表わします。


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